年金制度だけでなく、介護保険においても、大きな違いがあると思います。介護保険に関しては、もちろん類似点も幾分かはありますが、重要な違いが一つあります。それは、ドイツでは、財産管理か身上看護かどちらの援助を受けるかを選ぶ機会があります。しかし日本では、私がお聞きした限りでは、それが可能ではないということです。日本では身上看護における援助は受けられますが、財産管理における援助は受けることが出来ません。介護が必要な場合のみ、身上看護の援助を受けられます。
つまり私の理解では、あなた方の制度では、私たちの制度においてよりも、ずっと高度な専門知識があるということです。なぜなら、あなた方には身上看護の援助を受ける機会だけが与えられて、財産管理の援助がないのであれば、どのような身上看護の援助が必要であるかについて知っている専門家と強力な関係を持つ機会が大いにあるからです。私たちがドイツで学んだのは、日本にはある種のケース・マネジャーがいるということです。私たちが、このようなケース・マネジャーを導入したのはここ2、3年のことであると思いますが、私たちの制度にケース・マネジャーを取り入れ、または組み込んでいく上で、私たちにとって日本は一部、モデルであったのです。
例えば、介護の必要な人や、その親族に助言を与える任務を負った機関が日本にあることが挙げられます。ドイツには、そのような機関はありませんでした。現在、私たちが計画し実行しているのは、一方では介護者のための、他方では慢性疾患患者のための、このようなカウンセリング制度を私たちの制度に組み込むことであります。
だからこそ、私はあなた方のプロジェクトに、とても価値があると思っております。なぜならあなた方の国では、カウンセリングや、支援、慢性疾患患者を親族に抱えた家族にとってよい、身上看護の助けを探す上での専門知識は、より洗練されていると思うからです。私たちの国では、残念ながら、あなた方の国ほど洗練されておりません。なぜなら、ドイツにはケース・マネジャーやケア・マネジャーがあまりいないからです。
さらに、私たちは身上看護と財産管理の援助のどちらかを選択する機会がありますが、それはつまり親族と、その親族に助言を与えるための教育を実際に受けたケース・マネジャーまたはケア・マネジャーとの密接な関係がないということなのです。そして、あなた方が行っているプロジェクトに匹敵するようなプロジェクトは、ドイツでは私の知っている限りありません。もちろん、私たちの成年後見制度は、アジアの高齢化の様相に関しての教育が十分に行き届いていないことが時にあるという情報を多く得ますが、私は特に高齢者の後見の為のカウンセラーの資格を与えるための教育プログラムが作られたプロジェクトは聞いたことがありません。それはつまり、例えば、認知症やレハビリテーションのプログラムなどに関しての資格を与えるということです。
あなた方のプロジェクトはとても重要なものです。なぜなら、あなた方が奮闘しているのは、助言を与える任務を負い、また認知症と精神障害と鬱などの違いが理解されるように、またこれらの異なった障害に敏感に対応することができるように後見を行う任務を負った人々を教育し、資格を与えることだからです。それはつまり、彼らが認知症患者や、それぞれの患者さんの介護者とより緊密で近い、よい関わりを持つことができるようになるということなのです。
そして、私たちは認知や梗塞に関するリサーチをたくさん行っているのですが、私たちの認知に関するリサーチから学んだことは、認知症を患う人々の生活の質のためや、また認知症患者とその介護者にとって重要な支援体制を認識する上においても、対人コミュニケーション、特に緊密な対人関係が非常に重要であるということであり、またこの緊密性や密接な社会的なコミュニケーションは、介護者の生活の質のためにも、とても重要であります。だから、私はあなた方のプロジェクトを非常に高く評価しております。あなた方の努力されていることは、助言を与える人々への教育プログラムを通してコミュニケーションを強化することであり、だからこそ非常に重要なプロジェクトであるのです。