現在わが国では、少子高齢化の進展により、65歳以上の高齢者人口がおよそ3200万人となり、総人口に占める割合は約25%にまで高まっている(注1)。今後、人口の減少と高齢化がさらに進むことにより、2060年には人口が約3割減少しておよそ8,700万人になり、高齢化率は約40%にまで高まる(注2)とみられている(図1を参照)。
この高齢化の進展にともなって、認知症高齢者が大幅に増加してきており、近年、重大な問題となっている。 2012年時点で、認知症高齢者の推計人数は約550万人(および軽度認知障害の高齢者が約310万人)にものぼっているとみられている(注3)。 さらに、判断能力が不十分な人は認知症高齢者だけに限られるわけでなく、これ以外にも、精神障がい者(認知症の人を除く)が約260万人、知的障がい者が約60万人ほどいるとみられている(注4)。これらをすべて合わせると、判断能力が不十分な人は全国でおよそ900万人にものぼる計算となり、今後もその数は増えていくものとみられる(図2)。
このような状況の中、当プロジェクトでは、高齢社会におけるさまざま問題について、特に判断能力が不十分な人を支援する制度である成年後見に関する研究・教育・事業等を行い、社会的な問題を解決に導くための処方箋を政策提言等の形で提示することなどによって、地域に暮らす人々の安心・安全を守り、その福祉の向上を図ることを主要な目的として活動を展開している。 より具体的には、市民後見人を養成するための講座の開催、後見実務や民事信託等の後見関連事項に関する調査・研究、市民および親族の後見活動や行政による後見関連事業への支援等の事業などを行うことによって、市民後見等の一層の普及・推進を図り、もって希望ある社会の形成促進の一助となることを目指している。