当プロジェクトでは、後見実務の実態を客観的に明らかにし、適切な後見のあり方を実務的かつ実証的に検討・分析することを通じて、今後目指すべき後見のあり方を提示することを目的として、後見の活動や実務等に関するさまざまな研究や分析を行ってきた。
研究では、主に4つの主要な分析(①後見業務の評価に関する分析、②後見業務の内容に関する分析、③後見人の適性や業務体制等に関する分析、④後見報酬に関する分析)を実施することで、後見実務全般について、その実態を客観的に明らかにするための実証分析を行った。 具体的には、後見人等へのアンケート調査や各種後見関連資料の収集などを通じて、後見実務に関する各種データを広範に収集・整理し、データベースを構築した上で、後見実務の諸側面における実態を、主に計量分析を用いて明らかにした。
研究成果としては、後見実務の諸側面として、①後見業務の実施状況、②後見関係者の社会的属性や本人の状況、③後見等の形態、④本人の資産や収支の状況、⑤後見報酬の状況、⑥後見業務に対する後見人の認識、⑦後見業務の詳細な実施内容、⑧後見人の活動に対する評価、⑨現行の報酬決定システムの構造、のそれぞれについて、その実態を実証的に明らかにすることができた。 その際特に、①業態間比較と、②後見報酬と後見実務の関係、に重点を置き、また比較研究として海外の後見事例を参照しながら、各業態の特徴を析出するとともに、多変量解析等を用いて後見報酬と後見実務の諸要素との相関関係を解明することを通じて、後見実務の実態を明らかにした。
当プロジェクトでは、親族後見人の活動や業務に対する支援のあり方に関する研究を行ってきた。 研究の主要な目的は、主に次の2点である。 第一に、親族後見の実務について、特に地域における親族後見人に対する支援の現状という観点からの把握を試みることにより、親族後見における実務上の諸問題の概要を明らかにし、さらにその課題の解決のために必要とされる方策を提示する。 第二に、当プロジェクトならびに後見に関連する各支援機関により、親族後見人に対して専門的助言・指導等を行うことによって、親族後見人が抱えている実務上の諸問題の解決と活動内容の改善をはかる。
以上の目的のもと、本研究では次のような調査・研究を行った。 まず、親族後見人への地域支援の実態に関する調査・分析が実施された。 親族後見人に対する地域的支援の実態を具体的に把握するために、親族後見に関する各種のデータに基づく分析を行った。その具体的な調査項目は、①後見に関する制度や地域社会資源等の理解水準、②周囲の人々による支援状況、③地域の各機関による支援状況、④家庭裁判所による支援状況、⑤後見監督人による支援状況、である。 そしてこれらのデータを基に、親族後見の特徴をより明確にするために、第三者後見のケースと比較・検討しながら、親族後見への支援に関する計量的な分析を行った。
また上記の分析に並行して、当プロジェクトでは、親族後見人に対する具体的な支援活動を展開し、同時に後見人への支援を行っている諸機関と連携しこれをサポートする活動を行った。 本支援活動においては、親族後見人がその後見業務を適切かつ不自由なく行うことができるように、後見に関する専門的な知見を有する諸機関が親族後見人に対して対話・助言・指導等のサポートを行うことを通じて、その業務上の諸課題の解決を促した。
上記以外にも、当プロジェクトではさまざまな研究を行っている。 さらにこれらの研究成果を踏まえ、後見に係る現行の制度や運用のあり方を改善し、人々がより使いやすい仕組みにしていくために、各種の政策提言等も行っている。
そして本年度(2014年度)は、上記の研究成果等に基づきながら、これまでの調査・研究をさらに発展させつつ、市民後見人を養成する教育活動に関する研究を行う予定である。
具体的には、教育内容の質や成果を今後より一層高めていくために、講座の教育成果(養成講座の教育効果を客観的に明らかにするためのプロセス評価ならびにアウトプット評価、およびそれらのデータに基づいて教育の成果を析出するための計量分析)や社会的効果(講座の修了生による社会的活動等の状況に関する調査、およびそれらのデータに基づいて社会的な効果を明らかにするための計量的分析)などに関する実証分析や、教育内容や方法等の一般化・標準化を通じた教育モデルの構築、などといった研究を行う予定である。