当プロジェクトでは、成年後見制度と福祉信託制度およびその周辺領域のサービス化・事業化に関する調査を行ってきた。
本調査では、判断能力が不十分な高齢者等を支援し、本人に必要な医療・介護・生活等のサービスを適切に選択し、本人の財産から費用を支払うことを可能にするための仕組み作りの一つとして、成年後見と民事信託を活用した社会事業の創出を目指した。
具体的には、成年後見と民事信託のパイロット事業を立ち上げ、後見と信託の啓発を行うだけではなく、業務として利用支援・受任・受託を行うなかで、社会事業化にあたっての運営上の課題や制度上の課題の抽出をはかった。また既に運営がなされている後見法人を調査し、成年後見の事業の現状把握と各法人が抱えている課題を浮き上がらせた。 同時に、不動産・金融・介護業界等を対象としてアンケート調査等を行った。これにより、成年後見制度に対するニーズ、日常生活支援サービスなどの周辺事業のニーズ、金融機関をはじめとする事業者の後見に関する業務方針策定支援ニーズ等が高まっていることが明らかとなった。
さらに、上記の調査によって明確となった制度上の課題等について分析・整理し、今後の制度改正のあり方や新たな仕組みづくりに関する検討を行った。加えて、成年後見と民事信託の社会事業化による社会・経済への影響について検討を進め、成年後見と民事信託の社会的な整備と普及の必要性などについて提言を行った。
当プロジェクトでは、地域の高齢者の生活を支援するための事業の創設および運営に関する調査を行ってきた。
本調査では、地域的な生活支援サービス事業を構築するための収益モデルの開発支援を行うと同時に、その事業化を進めるための支援を実施し、さらにその事業モデルを全国各地に広めていくための方法や仕組みづくり等に関する調査・分析を行った。 具体的には、見守りや家事支援サービスを高齢者へ提供する「生活サポート事業」と、成年後見制度を活用して認知症高齢者等の身上監護や財産管理等を支援する「成年後見事業」の2つの事業を組み合わせることにより、高齢者の日常生活をトータルにサポートする「地域生活サポート事業」を、市民後見NPO法人等に実装させていくための収益モデルの開発や事業化支援等を行い、さらにそれを全国に広めていくためのコンサルティング事業を展開していくための方法や体制づくり等に関する調査を行った。
本調査結果に基づき、地域の高齢者(特に単身世帯の高齢者)に生活サポートサービスを供給し、また判断能力が不十分な人に対しては成年後見制度を活用した支援を行っていくことで、地域の高齢者が可能な限り自立し、充実した生活を営むことを可能にし、またその権利擁護を図っていくことができる仕組みづくりが進んでいくと期待される。